T.遺言書による対策

 

1.遺言書を作成するメリット

 遺産を分ける方法は、次の3つに分かれます。

@遺言がある場合 遺言に従って財産を分けます
A遺言がない場合 相続人全員で 「遺産分割協議」 を行って、財産を分けます
B遺言の内容どおりに相続しない場合 相続人全員で 「遺産分割協議」 を行って、財産を分けます

  

 

メリット

 

@遺産分割協議で争いが発生すると見込まれる場合は、遺言を残しておくと、

争いの防止に役立ちます

A法定相続人以外の人 (遠い親戚や他人) にも、財産を残すことができます   

  

 2.遺言書を残せる人

 15歳以上で、遺言の内容を理解できる人。

 

3.遺言書の種類 ・・・ 「A公正証書遺言書」 をおすすめします

  @自筆遺言書 A公正証書遺言書 B秘密証書遺言書
内容

・内容は秘密

・すべて自筆で書く(日付を含む)

・内容を公証人へ

・公証人が作成

・内容は秘密

・ワープロ等も可能

費用 ◎ほとんどかからない ×おおむね数万円 ▲1万1千円
作成ルール ×自分で確認するので、間違える恐れもあり、遺言の効力を巡って争いになることもある ◎公証人が確認するため間違いがない ×自分で確認するので、間違える恐れもあり、遺言の効力を巡って争いになることもある
保管 ×保管場所と執行人を定めるが、紛失されたり、発見されないことがある

◎公証人他が保管するため、必ず執行される

◎全国の公証役場で、遺言の有無と保管場所を検索できる

◎公証人他が保管するため、必ず執行される

◎全国の公証役場で、遺言の有無と保管場所を検索できる

死亡後

×家庭裁判所で本物か検認

×先に開封すると5万円以下の過料

◎検認の必要なし

 

×家庭裁判所で本物か検認

×先に開封すると5万円以下の過料

 

4.過去の遺言内容を変更する方法

@過去の遺言を撤回する  特定のルールに従う
A新しい遺言を残す  変更したい部分を変更して、新たに残す

 

U.贈与による対策 (基本)

 

1.贈与の特徴

メリット

@生前に財産を譲ることができる

A相手は他人でもよい

B財産を譲りたい人に確実に譲ることができる

デメリット ・贈与税の税率は高い

 

 

2.贈与の種類

課税方式 非課税枠 税率 所有権 相続財産に含まれるもの
@暦年課税方式 年間110万円 10〜55% 移る 生前3年以内に贈与した財産
A相続時精算課税方式 2,500万円 20% 移る この課税方式で贈与した全財産

 

 @暦年課税方式の利用 (初級編) 

メリット

@110万円までは非課税

A相続時精算課税方式とは異なり、その年で課税関係が完結する

 (生前3年以内の贈与を除く)

デメリット 贈与税率が高い

 

  A.特例贈与財産 / 直系尊属から20歳以上

贈与を受けた金額−110万円 贈与税の金額
     200万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×10%
     400万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×15%− 10万円
     600万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×20%− 30万円
    1000万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×30%− 90万円
    1500万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×40%−190万円
    3000万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×45%−265万円
    4500万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×50%−415万円
    4500万円超 (贈与を受けた金額−110万円)×55%−640万円

 

  B.一般の贈与財産 / A以外の贈与

贈与を受けた金額−110万円 贈与税の金額
     200万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×10%
     300万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×15%− 10万円
     400万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×20%− 25万円
     600万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×30%− 65万円
    1000万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×40%−125万円
    1500万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×45%−175万円
    3000万円以下 (贈与を受けた金額−110万円)×50%−250万円
    3000万円超 (贈与を受けた金額−110万円)×55%−400万円

  

 A暦年課税方式の利用 (上級編 例題)

  Aさん (父60歳) は、Bさん (子30歳) に、9,900万円の財産を、贈与したいと考えています。

  Aさんは大変な資産家で、相続税を申告するときは、最高税率の55%が適用されます。

贈与の進め方

@1年間の

贈与税額

A10年間の

贈与税額

B10年後の

財産減少額

C相続税の減少額

B×55%

 D節税額

C−A

贈与しない 0円 0円 0円 0円 0円

毎年110万円

0円 0円 1,100万円 605万円 605万円

毎年990万円

174万円 1,740万円 9,900万円 5,445万円 3,705万円

    ★ ポイント      

     @贈与110万円 → 節税額605万円 ・・・ 9,900万円の財産移転に90年かかる 

     A贈与990万円 → 節税額3,705万円 ・・・ 毎年、贈与税がかかるが効果的に節税

     相続税の税率 (55%) より、低い贈与税率を使って、贈与するのが節税のコツです

 

 B相続時精算課税方式

  ■ 原則

要件

・父母・祖父母 (60歳以上) → 子・孫 (20歳以上)

 ※年齢は贈与した年の1月1日で判定

メリット

@生前に所有権を移転できるため、収益物件の収益も移転できる

A贈与時の時価で課税されるため、将来値上がりする資産 (土地・有価証券) なら有利

注意点

@将来値下がりする資産(土地・有価証券)なら不利

A相続時に相続財産として精算されるので、納税資金を準備する

B暦年課税方式に戻れない

C相続財産が少なくても、相続税の申告義務が発生

D小規模宅地の減額が適用できない

E相続税納税のために、贈与財産を物納することができない

 

@課税される金額 贈与を受けた金額 − 2,500万円 = P
A贈与税額 P × 20% 

 

 ■ 住宅取得資金の贈与 

要件

@父母・祖父母 (年齢制限なし) → 子・孫 (20歳以上)

 ※年齢は贈与した年の1月1日で判定

A平成31年6月30日までに贈与

B居住・受贈者・住宅取得等資金・家屋に要件あり

メリット

@相続時精算課税の非課税枠2,500万円に、1,000万円加算される

A住宅借入金特別控除も適用できる

 

    ★ 例題 ・・・ 父より 4,000万円の住宅取得資金の贈与を受ける

@課税される金額 4,000万円 − (2,500万円 + 1,000万円) = 500万円
A贈与税額 500万円 × 20% = 100万円 

  

V.贈与による対策 (応用)

 

 1.贈与税の配偶者控除 

概要

・夫から妻へ、または、妻から夫へ自宅の不動産を、2千万円贈与しても、贈与税がかからない 

メリット

@相続財産を減らすことができる

A生前3年以内の贈与加算の対象にならない 

要件 

@贈与できる相手

・婚姻期間20年以上(婚姻の届出 〜 贈与のあった日)の配偶者

A贈与できる金額

・年間に、110万円 + 2千万円まで

 ※相続税評価額

B贈与できる資産

・居住用資産、増築含(店舗兼住宅は住宅面積90%以上)

・これらの取得資金

C居住開始時期

・翌年3月15日までに居住

D回数制限

・過去にこの特例を受けていない場合に限る

注意点    

@相続で渡した方が有利なケースがある

・相続税で小規模宅地の減額の特例を適用した方が節税効果が高いケース

・相続の方が、登録免許税と不動産取得税の負担が軽い。

 相続時 ・・・ 固定資産税評価額 × 0.4%

 贈与時 ・・・ 固定資産税評価額 × 5.0%

 ※税理士などの専門家の判断をおすすめします。

 

 

  2.扶養義務者間の資金援助

概要

・扶養義務のある者(おもに子や孫)に、生活費や教育費を、その都度、わたす

 ※一括支給の場合は、下記の特例を受けないと、贈与税がかかる

  教育資金一括贈与・住宅取得等資金の一括贈与・結婚・子育て資金一括贈与

メリット @相続財産を減らすことができる

A生前3年以内の贈与加算の対象にならない (もともと贈与ではない)

B下宿・留学費用も可能 (教育資金一括贈与では不可)

要件

@金額

 通常、必要と認められる範囲内

A扶養すべき者の経済力

 支払能力がない

注意点

@援助を受けた者が、生活費として消費しないと、贈与税がかかる場合がある 

 

 

  3.教育資金一括贈与(直系尊属間)

概要 ・子や孫に教育資金として、最大1,500万円 (受贈者1人あたり) まで、非課税で、一括贈与できる。
メリット @相続財産を減らすことができる

A生前3年以内の贈与加算の対象にならない

B金融機関等の使途チェックにより、近親者の目的外の費消を予防できる

C孫・ひ孫なら、次以降の相続を飛ばせる

要件

@相手は30歳未満の子・孫など

A平成31年3月31日までに一括贈与

B1,500万円以下(受贈者1人あたり)

C金融機関で契約・使用時のチェック

注意点

@塾など学校以外の費用は500万円以下

A下宿・留学費用は不可

B30歳現在の使い残しには、贈与税課税

 

 

  4.住宅取得等資金の贈与(直系尊属間)

概要

・子や孫に住宅取得資金として、最大1,000万円 ※まで、非課税で、一括贈与できる。

 ※受贈者1人あたり 耐震住宅等は1,500万円まで

メリット

@相続財産を減らすことができる

A生前3年以内の贈与加算の対象にならない 

B孫・ひ孫なら、次以降の相続を飛ばせる

要件

@相手は20歳以上の子・孫など

A平成31年6月30日までに一括贈与

B一般住宅は1,000万円以下(受贈者1人あたり)

C耐震住宅等は1,500万円以下(受贈者1人あたり)

注意点

@翌年3月15日までに居住しないと、贈与税がかかる 

 

 

  5.結婚・子育て資金一括贈与(直系尊属間)

概要 ・子や孫に結婚・子育て資金として、最大1,000万円 まで、非課税で、一括贈与できる。
メリット

@相続財産を減らすことができる

A生前3年以内の贈与加算の対象にならない 

B孫・ひ孫なら、次以降の相続を飛ばせる

要件

@相手は20歳以上50歳未満の子・孫など

A平成31年3月31日までに一括贈与

B1,000万円以下(受贈者1人あたり)

C結婚費用は、300万円以下

D子育て(妊娠・出産・幼稚園や保育園の費用)

注意点

@50歳現在の使い残しには、贈与税がかかる

A贈与した者が途中で死亡した時の残額には、相続税がかかる

BAのケースで、遺贈の場合、相続税2割増の摘要はない

C結婚・子育て費用の領収書などの管理に手間がかかる 

W.生命保険による対策 

  

1.非課税枠の利用

  

 @生命保険による死亡保険金には非課税枠があります。

 500万円 × 法定相続人数

  たとえば、法定相続人が、配偶者と子2人であれば、非課税枠は1,500万円です。

  現金や預金で1,500万円を残すと課税されますが、死亡保険金であれば課税されません。

  

 A養子がいる場合

実子の有無 養子が1名の場合の非課税枠 養子が2名以上の場合の非課税枠
 ・実子がいる 500万円 × 法定相続人数 + 500万円 500万円 × 法定相続人数 + 500万円
 ・実子がいない 500万円 × 法定相続人数 + 500万円 500万円 × 法定相続人数 + 1000万円

 

  

2.注意点

  

 @被保険者 ・ 保険料負担者 ・ 保険金受取人によって、取り扱いと税額が異なります

被保険者 保険料負担者 保険金受取人 取り扱い
A (亡くなった人) A (亡くなった人)  相続税の対象 (非課税枠利用)
A (亡くなった人)

 所得税の対象 (一時所得)

A (亡くなった人)  贈与税の対象 (税負担が大きい)

  

 A配偶者が受取人の場合

配偶者の相続発生後の生活 ◎か× 理   由
 経済的な不安あり ・生活費に充てることができるため
 経済的な不安なし ×

@配偶者の税額軽減があるため節税効果がうすい

A配偶者は相続税がゼロのケースが多い

B相続税負担が大きいのは子

C子を受取人にして納税資金にすべき

D配偶者の財産になるため、次の相続で税金が高い

  

 

3.生命保険金を利用した相続税対策

 

 ■ 生命保険金を利用した相続税対策は、3つあります。

  @納税資金対策   A二次相続対策   B遺産分割対策

 

 @納税資金対策

メリット

@必ず入金するため、納税資金として最適

A他の財産を処分しなくても済む

B代償分割金(例)として利用することも可能

 (例)相続財産は不動産と生命保険金のみ、相続人は3人。

    すべてAが相続した場合、かわりに解決金の性格で、2人の相続人に支払うお金

 

 A二次相続対策

  ・父の相続を一時相続とすると、母の相続を二次相続といいます。

  ・母の二次相続で子が納税資金に困るケースがあり、その対策を二次相続対策といいます。

対策

@父の一時相続の生命保険金の受取人を子にしておく

A父だけではなく、母も生命保険に入っておく

B生命保険契約に関する権利を利用する

母の死亡時の生命保険に加入。被保険者は母、保険料負担者は父、保険金受取人は父

父が先に死亡する → 子が「生命保険契約に関する権利」として相続

母が死亡する → 子が生命保険金を受け取り相続税の納税資金にする

注意点 ・父と母の死亡する順が異なるケースにも注意する

     

 B遺産分割対策

メリット

@遺産分割協議に影響されないので、特定の者に相続させることができる

A預金のように分割協議が終わるまで凍結されることがない

B相続放棄しても生命保険金は受け取れる

C代償分割金として利用できる

D遺留分の減殺請求 (注) の対象にならない 

(注)最低限相続できる財産(法定相続分の半分)の請求のこと

  

 

 ■ 知っておきたい、その他の生命保険

  @個人年金保険   A変額保険   B法人契約の保険

 

 @個人年金保険

メリット

@健康上、不安があっても、告知のみで加入できる

A死亡給付金部分は、生命保険の非課税枠を利用できる

B死亡給付金は、「払済み保険料+α」受け取れる(年金支払開始時期より前に死亡した場合のみ)

  ※個人年金保険の種類

1.終身年金

相続が発生すると、支払いは打ち切られる

× 早く亡くなると、元本割れ

▲ 保険料は高め

2.確定年金

5・10年など、決められた期間だけ受け取れる

相続が発生しても、遺族へ支払われる

◎ 元本割れは発生しない
3.有期年金

5・10年など、決められた期間だけ受け取れる

相続が発生すると、支払いは打ち切られる

× 早く亡くなると、元本割れ
◎ 保険料は安く設定されている

 

 A変額保険

メリット

@その他の部分は運用実績によるが、死亡保険金は保証される

A死亡保険金は終身保険と同じ(非課税枠が利用できる+納税資金として利用できる)

B保険料が割安

C保険金を受取る時の手続が簡単

注意点

@運用次第では、有期型の満期保険金や、解約返戻金が低くなる

A契約内容を十分、理解してから、慎重に加入する

 

 B法人契約の生命保険 

メリット ・退職金など様々な相続対策に利用できる
注意点

@保険金の受取時期、解約時期、保険料として必要な額、資金繰りなどを考慮する

A損金性(経費になる部分がいくらか)を確認する

B税法改正により変更を強いられる恐れもある

 

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